親として理解しておきたい、中学生が勉強しない理由
小学生時代は、親に言われなくても机に向かい宿題や家庭学習をしていたのに、中学生になった途端に、「勉強をしなさい」と声を掛けてもやらなくなってしまった我が子に、頭を悩ませる親御さんは多いと思います。
勉強しない理由を知る事が大切
まず、しっかり理解しておきたいのが、中学生になった子どもが、勉強に意欲を示さなくなる理由です。
理由がわかれば、「どうしてやらないの」、「昔はちゃんとやっていたのに」などと、無意味に子どもを責めてしまうことは減るはずです。
子どもの交友関係や、学校での出来事など、何もかも把握できていた小学生時代とは違って、中学生時代には、親のわからないことや聞いても教えてもらえないことが増えます。
中学生になると先輩後輩との関係や、部活動、思春期ならではの心の葛藤など、自分を取り巻く環境が大きく変わることで、勉強以外にもやらなくてはいけないこと、考えなくてはいけないことが沢山できるので、勉強の優先順位が自然と下がることはよくあります。
これは、子どもが大人になっていくためには必要な発達段階です。
親は、このことをまずはしっかり子どもの成長だと捉えてあげることが大切。
頭ごなしに親が「勉強しなさい」「友達の名前を教えなさい」「スマホは取り上げます」など、子どもの自尊心を欠くような発言をしてしまっては逆効果。子どもの成長を阻んでしまうことになりかねませんので関わり方に気を付けましょう。
中学生になった途端に勉強をしなくなった子どもを心配する気持ちはよくわかりますが、まずは、「子どもが成長している証」「勉強以外の人間関係に興味を持てた証」だということをしっかり理解し、その気持ちに寄り添っていくことが必要です。
勉強しない中学生に対して親が「勉強しなさい」と言っても無駄
中学生の子どもが、勉強しない理由がわかったとしても、その状況を安易に受け入れることは難しいかもしれません。
勉強をしない子どもに向かって、「勉強はしなくていい」と言える親はまずいないでしょう。
しかし、先程も述べたように、勉強をしない子どもに向かって、「勉強しなさい」と声を掛けるのは、逆効果になることが多いです。
私たちも同じです。
「掃除しなさい」「ちゃんと仕事しなさい」などと言われたら、やる気が減退しますよね。寝転がってばかりいないで掃除をしなければいけないことも、仕事にきちんと向き合わなければいけないことも、他人に言われなくても自分自身がよくわかっているのです。
わかっているのに他人から指摘された時の、なんとも言えない複雑な気持ちは、大人なら誰でも一度は感じたことがあると思います。
おそらく、勉強しなくてはいけないことは子ども自身も重々承知。親に言われなくても、やる時はやるはずなのです。
事実、親に「勉強しなさい」と声を掛けられた子どもの勉強時間と、自主的に勉強をした子どもの勉強時間は、後者のほうが長い時間になるというデータも存在するようです。
どうしても言わずにはいられない「勉強しなさい」の一言ですが、グッとこらえることも大切なのです。
勉強しない中学生に対して親としてできること
では、子どもが自主的に勉強をするようになるためには、親として何をすべきなのでしょうか。
勉強をしない我が子に、「勉強しなさい」と言えないとなると、為す術がなくなってしまいますが、子どもに勉強の意欲を持たせる方法は沢山あります。
中学生になり、課題のレベルもどんどん上がってくると、どうしても勉強が楽しいと思えなくなってしまうことがあります。
また、どれだけ努力(勉強)をしても、成果(点数)がでないことも多いです。
これは、子どもにとっては「失敗」の経験です。これが積み重なると、失敗経験だけが積み重なって、ますます勉強に気持ちが向かなくなります。
わからなくなったまま放置していると、その後の課題にもますますついていけなくなるので、さらにやる気はなくなり、このころには、勉強に嫌な印象しか持てなくなってしまいます。
勉強しない子供に大切なのは、「成功経験」を沢山積むこと
- 素振りの練習をしたらヒットが打てることがわかっている
- 自分でもヒットが打てると確信しているので練習を頑張る
- ヒットを打ったら、チームメイトに喜ばれること、自分も嬉しいことがイメージできる
- 実際にそれが実現できた
これを見ると、自分で達成できるとわかっている目標を立てて努力することで、達成したときのイメージまでしっかり理解できていますね。
このような小さな成功は、繰り返すことで、さらに高い目標設定ができるようになり、意欲もどんどんわいてきます。
勉強にも、この「成功体験」が大切なのです
目標にするのは、いきなり解けもしない難しい問題にするのではなく、「少し努力したら、達成できるもの」にすることが大切。あと一歩で溶けそうな問題を、大人の力を借りて達成することで、「わかる」とという楽しい経験を増やしていくのです。
- 少し頑張れば達成できそうな問題を選び、一緒に終わりを決める
- 必要な部分はヒントを与えながら、子どもが自分の力で達成できる方向に持っていく
- できたことを認め、褒める
大切なポイントになるのが、2と3です。
一見達成できそうにない問題を、大人が問題の範囲を小さく分けてあげることで、さりげなく子どもを成功に導くこと。できたら「いいね」「やったね」「出来たね」と認め、褒めてあげること。
たったのこれだけで、子どもの勉強に対する意欲は増します。
「わかる」「できた」経験は、とても大切なのです。
勉強しないからといって勉強する他の子と比べるのはやめよう
中学生になると、進路や将来のことについて、親同士で話すことも多くなります。
- 「○○ちゃんは、優秀だね」
- 「○○くんは、○○高校に行くんだって」
- 「○○ちゃんは、毎日○時間勉強しているんだって」
このように、我が子の友人の話を家でしていませんか?
全くしてはいけないことではないと思いますが、これに「あなたも頑張れば○○高校に行けるかもしれない」「○○ちゃんが○時間勉強してるんだから、あなたも○時間くらい頑張りなさい」などと、他人と比べるような発言になってしまうのは、大変危険です。
子どもは親に他人と比べられる事で自尊心が傷つけられます
自分は自分なのに、他の子と同じ様になれと言われているような気持ちになってしまうのです。
また、他者と比べて優劣をつけることは、のちに子どもの人間関係にも影響します。
「勉強ができるから偉い」「頭がいいからあの人の言うことは絶対」など、歪んだ感情を持つことになりかえねませんので、他者と比べたり、学力で人を区別するような発言は慎みましょう。
親は努力の過程を認めてあげることも大切です
「静かだから何をしているのかと思ったら、さすが。勉強していたんだね。」
「(結果がでなかったとしても)勉強を頑張っていたことは知っているよ。」
子どもが努力していること、している行為をそのまま口に出すことは、その行動を認めてあげることにつながります。
あえて「すごいね」「頑張ったね」と言わなくても、「私はいつもあなたを見ているよ」という思いが伝わるだけで、嬉しいものです。
どうしても勉強しないのでれば、塾に通わせて強制的に勉強させるのが一番
何を試しても、勉強をしない子もいるでしょう。
そのような場合には、言いたくない言葉も口から出てしまうでしょうし、態度にも現れてしまい、親子関係に影響が出るかもしれません。
子ども自身も、勉強をしなくてはいけないことがわかっているのに、やってもわからないし、どうしても勉強をする気にはなれない、といった状況になっている可能性もあります。
そのようなときには、プロの手を借りるのも一つの手です。
わからなかった問題が解けた、勉強の仕方がわかった等、塾に通うことで得られるメリットは沢山あります。
本人に通う意志さえあれば、勉強に対する意欲を向上させるチャンスです。
少し出費はかさみますが、子どもに勉強する習慣をつけてもらいたい、勉強の楽しさを知ってもらいたいと思うのであれば、痛い出費ではありませんね。
ただし、塾にもいろいろなスタイルがあるので、選ぶ時は慎重に。
一斉指導の塾は、学校と同じような授業スタイルのため、自主的に先生に質問したり、ある程度の学力が身についている子には向いていますが、そうでない子は取り残されてしまう恐れがあります。
個別指導や、家庭教師などは、自分のわからない問題がわかるようになるまで付き合ってくれる点が良いですが、一斉指導タイプのように、「みんなが勉強しているから自分もやらなくては」という学習習慣を身につけるための効果は薄いかもしれません。
自分のお子さんに合った指導方法と、お子さんの意欲が向くものを選ぶことが大切ですよ。